囲碁は将棋やチェスやオセロなど他のゲームと比較してとても難しいとされる。
難解なゲームに勝つ鍛錬をすることで、戦略的な思考が鍛えられるため、経営者や政治家などに多くの囲碁愛好者がいる。
その難しいとされる囲碁において、2016年3月に、Googleの囲碁を打つ人工知能システム「AlphaGo(アルファ碁)」が、世界ランキング上位の韓国の囲碁李セドル氏に勝利した。
最新の人工知能(AI)を持つコンピューターシステムの処理能力の高さ、アルゴリズム等についてまとめた。
Contents
囲碁に人工知能(AI)が勝つのはそんなにスゴいことなの?
囲碁は人類が生み出したゲームの中で、最も古くて知的だと言われている。
国際的な科学専門誌「ネイチャー」によると、人工知能が人間の囲碁のプロ棋士を破るのは2020年代以降だと言われ続けてきていた
囲碁はどんなゲーム?
10数年前に「ヒカルの碁」という漫画が流行ったので、囲碁はやったことはないけどて何となく知っている人もいるだろう。
簡単にいうと、囲碁は陣取りゲーム。
ルールはいたってシンプルで、縦横19本の線を持つ碁盤の上で、黒と白の石を打ちあう。
相手の石を囲むと、囲んだ石を取り上げることができる。
例えば、黒が白を囲むと白を盤上からとりあげることができる。
出典:COSUMI
上の図なら、緑の■のところに、黒を打つと、白の石を盤上から取り除くことができる。
最終的に、盤上にある黒と白の石の数、相手から取り上げた石の数の合計が大きい方が勝ち
というのが大まかなルールだ。
将棋やチェスでAIが人間に勝利した歴史
コンピューター VS 人間という試みは何も今に始まったことではない。
1対1のゲーム(麻雀など多数人でやるゲームを除く)でいうと、オセロや将棋など子供のころから慣れ親しんできたゲームにおいて
過去数十年にもわたり、コンピューターが人間に打ち勝つことを目的に、各種コンピュータの開発が進められてきた。
1952年には、三目並べ(通称:○×ゲーム)のような原始的なゲームでしか、コンピューターは人間に勝利することが出来なかった
40年後の1997年、IBMのスーパーコンピュータ「ディープブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝利し、当時のIT業界は狂喜乱舞した。
それから20年後の現在、2016年3月に「AlphaGo(アルファ碁)」が、韓国のプロ棋士に勝利し、人類史上かつて類をみないほどの急激なAIの進化に、研究者たちが驚きを隠せないでいる。
囲碁は将棋やチェスに比べて1手の選択肢が膨大!
なぜ今回、囲碁のAIがプロ棋士を倒したのがスゴイかというと、囲碁のルールのゲームの複雑性にある。
囲碁ソフトはIT業界では、「難攻不落の関門」とされていた。
チェスや将棋などと比較して、囲碁は選択肢が飛躍的に多い。
最新スペックのスーパーコンピュータをフル回転されても、最適な打ち方の計算処理が追い付かないとされていた。
そのため、最先端技術を駆使しても、コンピュータが人間の囲碁棋士を倒すのは10年は先というのが業界の通説。
それが2016年に予定よりも早く、人間を倒してしまったため、関係者はAIの驚異の進化力に感心するばかり。
AIはどうやって囲碁に強くなったか?
プロ囲碁棋士に対して歴史的勝利をおさめた「AlphaGo(アルファ碁)」
「AlphaGo(アルファ碁)」がこれほどまでに強くなった秘密をさぐってみた。
一般的な将棋ソフトのアルゴリズム
チェスや将棋などのコンピュータソフトではどのようなアルゴリズム(=処理、解法、手法)を用いてるのだろうか?
将棋のソフトとして有名なのは2005年に開発された「Bonanza」というソフトだ。
Bonanzaは、「全幅探索」という手法を用いており、簡単にいうと、
瞬時に、ルールで許されるすべての打ち方を洗い出し、最適な一手を選択する
具体的には、コンピュータ内で、
1秒間に50万局面を探索し、
1秒で18手先までを先読みする
弱点としては、機械的に力任せにあらゆる選択肢を洗い出しているだけなので、
経験を積んだ人間特有の「大局観」「直観」などはコンピュータは持ち合わせていない
AlphaGoの革新的なアルゴリズム
将棋のアルゴリズムでは、1秒で18手先までを読むために、1秒間に50万局面を探索する必要がある。
将棋より複雑な囲碁では、同様の方法で先の手を読み切ることは現在のコンピュータの性能では不可能だ。
そこで、AlphaGoは、将棋ソフトBonanzaとは全く異なったアルゴリズムを搭載している。
それはAI自らが学習する「ディープラーニング(深層学習)」という技術だ。
開発しているGoogleのDeepMindチームは、AlphaGoに囲碁のプロ棋士たちの3000万局にも及ぶ局面と打ち手を記憶させる。
つまり「ある盤面において、次にどこに打ったか」の情報をひたすら抽出し、AlphaGoに学習させたのだ。
論文によると過去の囲碁の歴史で蓄積された定石(特定の盤面で有利とされる打ち手)のほとんどを網羅し、
囲碁高段者の打ち手の約57%を再現できているという。
バージョンの異なるAlphaGo同士を、繰り返し対戦させ、実戦経験から徹底的に学習させた。
先ほどの3000万局を覚えこませるだけでは、特定の盤面においては有利な一手は導き出せるが、
最終的に囲碁に勝つため、先を見据えた戦略的な打ち方はできない。
どんな局面にも先を見据えて対応できる「柔軟性」を磨くため、
最新のバージョンAlphaGoと、ランダムに選定した過去バージョンのAlphaGoを戦わせまくり、
実戦経験から膨大な学習をさせたという。
AIをめぐる今後の予想
出典:The future of A.I. ethics is in our hands
産業革命は、300年ほど前、1700年代~1800年代にかけて約100年ほどかけてゆっくりと「工業化」が進んだ。
蒸気機関の発明で、製鉄業が進化し、鉄道が発明され、工場で自動化が進んで、労働者の仕事が奪われるなど、世の中が一変した。
スマホ革命は、2008年にiPhoneが発売され、FACEBOOK、Twitterなどの各種SNS、タブレット端末の普及など、急速に世の中が脱パソコンで日常生活のインフラとまでなった「スマホ化」が進んだ。
この変化は産業革命の比ではない。
今後の10年は、10年前から現在よりももっと変化のスピードは速くなる。恐ろしいくらいに。
AIが自動車やドローンを運転することが当たり前になり、通信販売事業や日常生活の移動がまったく変わってしまったり、
投資では、人間のファンドマネージャーより、AIのファンドマネージャーの方が圧倒的に優れた運用成績を残したり、
ITやオフィスワーク分野では、人間がキーボードからパソコンに入力作業をすることなどはほとんどなくなり、
音声入力などでタブレットから入力することが当たり前になるかもしれない。
時代は過去には巻き戻らないので、AIをうまく使える部分では最大限活用し、
AIにはできないところであなた自身の人間性を最大限に発揮し、優位性を築いていかないと生き残ることは難しいだろう。
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